ちょうど1週間ぶりです。
週1のペースになりつつある。
もう少しペースを上げたいと思ってはいるのですが…
最近、タイトルのように著作権について考えさせられることが2つほどありました。
ひとつは、先週あった『無断転載パクリブログ事件(当事者の表現のまま)』です。
デザインに関わっている方ならご存知の方も多いと思いますが、あるブロガーが他の方が書いた記事を引用元も表記せずに丸々コピーして、いかにも自分で書いた文章のようにブログにアップしていたということ。
ふたつめは、昨日最高裁が審理を差し戻した『テレビ番組を転送するサービス』で、著作権法上の権利を侵害しているとした件です。
まず、ひとつめ。
ここでは、『無断転載パクリブログ事件』の詳細については書きません。
当事者同士で解決される事だと思いますので、第三者の私が『無断転載パクリブログ事件』について、とやかく言うつもりもありません。
私が考えさせられたというのは『無断転載パクリブログ事件』そのものではなく、そこにツイートされたつぶやきやコメントを見ていると「著作権をわかっている人はどれくらいいるのだろう。」ということ。
もちろん私もその内のひとりなんですが…
記事をコピーしたブロガーに対してコメントしている人の意見が 「無断で引用するとはけしからん」というように『引用と転載とを混同しているのでは?』と感じられたり、『こんなことをしてはダメだよね。』とつぶやいている人のアイコンがアニメのキャラクターだったりすると、「う〜ん…」と考えさせられてしまう。
中には、『 ™ 付きのキャラクター』まであったりすると「ホントにわかってるのかなぁ。」と…
そういう私も法律を専門に学んだわけではないので大きなことを言えないのですが、仕事柄、自分なりに色々と調べたこともありましたし、弁護士の方と相談をしたこともあります。
一番最初に著作権について調べたのは今から15年以上前です。
Windows95が発売される前ですから20年近いかも知れません。
当時、DTP という言葉が使われはじめた頃、今みたいに個人で買えるようなカラープリンターがありませんでした。
カラーの出力となると出力センターにお願いしていた時代です。
で、知人に「ある商社が新しくカラー出力機を輸入販売するので試しに出力してみてくれないか。」と言われたので、Mac のイラストレーターでカレンダーを作って、それを出力してもらうように知人にデータを渡しました。
1週間ほどして送ってきた出力結果は、当時としては満足できるものだったと記憶しております。
と、ココまでは何も問題はないのですが、その数ヶ月後ある展示会がありました。
Mac やプリンター、出力機などの展示会です。
そこにその商社も出展していたのですが、そこで使われていたサンプルデータが、私の制作したカレンダーでした。
もちろん私は一切関知しておりません。
ブースにいた担当者に話をしても埒が明かないので知人を通してクレームを入れてもらいましたが、当時は大手の商社でもそれくらいの認識でしかありませんでした。
この件がきっかけで色々と著作権について調べ始めたんですよね。
ちょうどパソコン通信時代の Nifty でも著作権について話題になっていたので、よくフォーラムを覗いたりしていました。
また、以前の記事にも書きましたけど、このサイトのデザインの一部が盗用(?)されたことがありました。
アクセスログや該当サイトのスクリーンショットなどを元に弁護士と相談したこともあります。
しかし、弁護士の見解は『著作権侵害にはあたらない』と。
また、「これって誰でも思いつくことじゃないの?」とも言われました。
デザインやレイアウトに関しては『著作権』を主張することが難しいのは理解できます。
保護の対象が『アイデア』ではなく『思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。(著作権法二条一)』というのもわかります。
でも、『この文字の組み方や色使いは誰でも思いつくものではない。』と反論したのですが、弁護し曰く「主張できて盗用かな。」ということらしい。
だから、内容証明を送って使用をやめるようには主張できますが、法的な効力は期待できないという。
仮に訴訟を起こしたとしても勝てないらしい。
というようなことがあって、何度か著作権に関する文献を読んだりしているのですが、最近あらためて読んで見て気づいたことがあります。
以前も引用しましたが、文化庁の平成22年度版著作権テキストによると
「引用」「転載」関係
他人の主張や資料等を「引用」する場合の例外です。
【条件】
- ア 既に公表されている著作物であること
- イ 「公正な慣行」に合致すること
- ウ 報道,批評,研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること
- エ 引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること
- オ カギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること
- カ 引用を行う「必然性」があること
- キ 「出所の明示」(75頁(注)参照)が必要(コピー以外はその慣行があるとき)
とあります。
ところが、電子政府の総合窓口e-Gov[イーガブ]の著作権法を見ると
(引用)
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。(出所の明示)
第四十八条 次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。
一 第三十二条、第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項、第三十七条第一項、第四十二条又は第四十七条の規定により著作物を複製する場合
とあるように、上記の『エ〜カ』は著作権法では明記されていないようです。
今まで、『主従関係』が明確でないといけないと思っていましたが、著作権法には記述がない。
もちろん、著作権テキストに書いてあるということは、今までの判例を元にしているのだと思いますが、今回の『無断転載パクリブログ事件』の場合、仮に『出所を明示』していたらどうなんだろう。
当然、『正当な範囲内』というのも争点になるのでしょうが、自分で書いたように振る舞っておらず、引用であるということや出所を明示していれば、全文を引用してもいいのだろうか?
ますます、わからなくなってきた…
このサイトでも、キャラクターがサッカー日本代表のユニフォームを着ていたり、ポストカードにブランドのロゴを少し変えてイラストとして掲載しています。
キャラクターは3D ソフトで制作したオリジナルです。
ユニフォームもテクスチャとして描き起こしたものを使用しています。
でも、サッカー日本代表のユニフォームを元にしているわけだし、アディダスにも日本サッカー協会にも許諾を取っていませんので、本来はダメなのかなぁ。
それとも許される範囲なのかなぁ。
ブランドのロゴについてもパロディとして、許される範囲なのでしょうか?
これがいわゆる『空き地を横切る行為』なのでしょうか?
今回は、引用に関して書きましたが、それ以外の著作権に関して色々と書いてありますので、文化庁の平成22年度版著作権テキストを一度目を通してみることをお薦めします。
著作権法のように難しくはなく、わかりやすく解説されていますので『© マークについての記述(平成22年度版著作権テキストの50ページ)』や『空き地を横切る行為(平成22年度版著作権テキストの54ページ)』など面白いです。
それにしてもホント難しい問題ですよね。
私は経験がありませんが、持ち込んだ企画を盗用された事例も聞きますし、『アイデア』に対しても「もう少し何とかならないのかなぁ」と思う今日この頃です。
長くなりましたので、ふたつめの『テレビ番組を転送するサービス』で、著作権法上の権利を侵害しているとした件について感じたことは後日。